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照明デザイン賞受賞者一覧

照明デザイン賞は、光を素材とした、優れたデザイン的内容を持ち、創意工夫に満ちた作品を顕彰するものであり、近年、国内に竣工した空間に対する光環境や照明デザインにおいて、社会的、文化的見地からも極めて高い水準が認められる独創的なもの、或いは新たな照明デザインの可能性を示唆するもので、時代を画すると目される優れた作品を称え表彰するものです。

2021年 照明デザイン賞 講評

総評

応募総数は55作品を数え、第一回審査会(1〜3次審査)によって段階的に絞られた10作品が現地審査の対象となった。コロナ禍により多少の不便さはあったものの審査は順調に行われ、2名の審査員が現地に赴き関係者の熱心な説明を受けた。第二回(最終)審査会では各審査員の報告を受けた後活発な議論が交わされ、採点も含め3回にわたる決選投票を経て受賞者が決定した。どの作品もコンセプトが明快で、時代のニーズに応えこれからの照明の可能性を広げるものであった。

(審査員長 富田泰行)

最優秀賞:玉川髙島屋S・C 本館グランパティオ

撮影:阿野太一

受賞者:
永山 祐子(有限会社永山祐子建築設計)
岡安 泉(株式会社岡安泉照明設計事務所)
前田 知希(大光電機株式会社)
作品関係者:
事業主:
東神開発株式会社
設計・監修:
有限会社永山祐子建築設計
設計・監理:
株式会社日本設計
施工:
東急リニューアル株式会社
照明設計:
株式会社岡安泉照明設計事務所
照明制作:
大光電機株式会社

作品コンセプト:

 商業施設の共有部の改修プロジェクトである。訪れた人に本やアートとの新たな出会いをもたらす、大きな吹抜け空間を、時に公園のような、時に書斎のような親密な場所にしたいと考えた。親密な場所とする仕掛けとして、「光の群像」をつくろうと考えた。669個の電球と1338本のコードにより天井全体にボールト形状を構成。斜め40度の2本の細いコードにネックレスのように一つの電球をつっている。白い線が重なった集合体が雲のように頭上を覆い電球によって照らし上げられる。一番長い5mのコードを弛まないよう綺麗につるすため必要となるおもりの重量計算と実験を繰り返した。また、アクリル球の内部で反射光を集めるために削り取られた窪みの形状が眩しく見えないよう、また空間に歪な反射を生まないよう配慮しながら試作を重ねた。2本のコードのうち通電していない1本にSUSワイヤーを入れ、落下防止の安全対策にも細心の注意を払っている。

講評:

 本館中央1・2階吹き抜け大空間の改修プロジェクトである。改修前の空間に不足していた「明るさ」と「居心地の良さ」を作ることを目指した。まず目に入るのは、天井から吊り下げられた透明な電球によるダイナミックな光のネックレスの数々である。直径6センチのアクリル球の内部を30度の円錐形に削って、4.5WLEDの光を眩しく見えないよう床面に反射させて均一な明るさを得た。一番長いコードは5m。コードがたわまずにV字を保つ重さを備えた669個の電球で、ボールト形状の星空のような光天井が構成されている。心配なのは安全性であるが、V字に吊ったコードと直角方向にワイヤーを張って揺れを吸収する、V字のコードのうち通電していない1本にSUSワイヤーを入れて落下を防止するなど、細心の注意が払われている。憩いの場として、書斎として、時には舞台としての役割を担う場づくりを成功させた繊細な光の裏に、スマートな技術と地道な検証を見た。

(近田玲子)

優秀賞:銀座駅リニューアル

撮影:Nacása & Partners Inc.

受賞者:
松下 美紀(株式会社松下美紀照明設計事務所)
中村 元彦(株式会社松下美紀照明設計事務所)
須賀 博之(株式会社日建設計)
作品関係者:
事業主:
東京地下鉄株式会社
建築設計:

向井 一郎(株式会社日建設計)
大場 啓史(株式会社日建設計)
大森 拓真(株式会社日建設計)
小島 正直(株式会社交建設計)
山代 順一(株式会社交建設計)

作品コンセプト:

 「伝統と先端」をテーマに改修が進められた銀座線。銀座駅では「人とメトロと街をつなぐ光」をコンセプトに、誰にでも分かりやすい空間を目指した。多様な利用者が容易に理解できるように、乗り入れる3路線からイメージされた形状“〇、△、□”と、路線カラーの“黄、赤、シルバー”をコアとして照明デザインを行い、それらは柳の木をイメージした光柱や開業時の鉄鋼框を見せる光壁、そして天井や上屋のデザインに取り入れている。

講評:

 まちの彩りが地下に染み渡ってきたかのような華やいだ公共交通空間が誕生した。土木構造物の厳しい与条件の中で「誰にでも分かりやすい空間」を共通テーマに掲げ、安全性と快適性を追求した地下空間である。乗り入れる3路線の空間構造と路線カラーをモチーフにした光の形態や色彩は地下動線に明快なオリエンテーションを与えている。他方、建築素材や仕上げは上質感のあるダーク系であるため明るさ感の獲得にかなり腐心したようだ。柱巻き、光壁、ホーム対向壁など鉛直面の明るさ確保や明暗によるアイキャッチ性や視線誘導など光の手法にも様々な工夫が見られたことも高い評価につながった。

 「明るければ駅は安全だ」という考えはもう過去のものである。駅は乗降、移動を主体とする都市交通の結節点であるが、今では休息やコミュニケーション、更にはワークスタイルの変化から多様性が求められてきている。本プロジェクトはこれからの駅のあり方に一つの指針を与えるものである。

(富田泰行)

優秀賞:旧富岡製糸場西置繭所

撮影:加藤純平

受賞者:
齋賀 英二郎(公益財団法人文化財建造物保存技術協会)
飯塚 千恵里(飯塚千恵里照明設計事務所)
作品関係者:
事業主:
富岡市世界遺産観光部
建築設計:
株式会社森村設計

作品コンセプト:

 国宝旧富岡製糸場西置繭所(2014年に世界遺産一覧表に記載)は、翌2015年から6年の歳月をかけて保存修理及び整備活用工事が行われた。耐震補強鉄骨とガラスボックスが新たに設置された1階のギャラリーとホールでは、照明器具は来館者の目に触れない位置に設置するか、極限までグレアを抑えて目立たない様配慮した。建築の価値を維持・保存しながらさらにその魅力を引き出し、見学と鑑賞ができる空間の創出をコンセプトとした。

講評:

 日本の近代化を、機械による生糸の量産化と高い品質管理により、1987年の閉業までこの国を支えた拠点であったことから、2014年に世界文化遺産として登録され、その保存・公開のための保存整備工事に伴う照明デザインが評価された。

 国宝旧富岡製糸場西置繭所は、収穫された1年分の乾燥した繭を保管する、貯繭(ちょけん)のための、東西2棟のうち1棟の倉庫である。正門から敷地に入ると、まず外観を特徴づける木柱の構造と、煉瓦の壁が見えてきて、夕暮れ時にライトアップされた姿を想像させる。建物内へ入ると、「保存」のための耐震補強の鉄骨と、ガラスによって覆われた展示ギャラリーが現れる。さらに2階へ上がると、製糸場最盛期の姿に復原された展示空間を見ることができる仕組みだ。国宝の文化財建造物と、国産の製糸産業遺産の歴史を読み解くミュージアムとして、超高演色性能を有し、かつグレアを制御したスLED ポットライトを使用することで、良質な展示空間が生まれた。

(木下史青)

優秀賞:高輪ゲートウェイ駅

受賞者:
窪田 麻里(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
中村 美寿々(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
山本 雅文(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
東日本旅客鉄道株式会社
プロジェクト統括:
東日本旅客鉄道株式会社 東京工事事務所
電気工事統括:
東日本旅客鉄道株式会社 東京電気システム開発工事事務所
デザインアーキテクト:
隈研吾建築都市設計事務所
建築設計・監理:
株式会社JR東日本建築設計

作品コンセプト:

 折り紙を模した大屋根が広々としたコンコースとホームを一体的に覆う駅舎は、近い将来、周辺大規模開発街区の中核となる。心地よい駅空間の創出と、新しい街のランドマークとなる光をめざした。

 障子をイメージした膜屋根により、日中は駅全体が柔らかな光に包まれ、日没後は徐々に内部から温かな光がこぼれでる。照度確保に特化した均一な照明ではなく、利用者がその瞬間を感じ取れるよう、時間に寄り添って変化する照明が必要であると考えた。開放的な建築空間を引き立てる照明計画と、利用者数と天候の変化を考慮して設定された調光調色の7つのシーンオペレーションによって、“新しい駅舎の光”を実現した。

講評:

 1971年に開業した西日暮里駅以来、およそ50年ぶりの山手線の新駅という非常に難しいプロジェクトである。この半世紀の間に、駅のあり方は大きな変化を遂げ、単なる交通施設から街との関係を再構築する拠点として位置づけられるようになった。本駅は、交通機能の本丸である1Fのホーム階、2F・3Fのコンコース・店舗、それを覆うETFEの幕屋根という水平な3層構造に対し、風雨を防ぐためのカーテンウォールが取り付けられているという構造となっているが、照明は、前者の3層を美しく浮かび上がらせることによって、あたかも街に開かれた屋根のある広場であるかのような、21世紀の駅のあり方を実現している。さらに、そのような光環境の文化的な意義だけでなく、自動的に制御される調光調色によって、人工環境と自然環境という認知の境界に対して揺らぎを与えるような仕組みであったり、幕屋根の大きな気積を体感できるホーム階の吹抜によって生じる天井高の違いを感じさせない安定的な光環境の実現など、高い技術水準も同時に評価された。

(川添善行)

入賞:嘉麻市庁舎

撮影:八代写真事務所

受賞者:
須田 智成(株式会社久米設計九州支社)
永野 孝之(株式会社久米設計九州支社)
福田 哲也(株式会社久米設計九州支社)
作品関係者:
事業主:
嘉麻市長 赤間幸弘
建築設計:
福田 光俊(株式会社久米設計九州支社)
清水 章太郎(株式会社久米設計九州支社)

作品コンセプト:

 熊本地震直後(2016年4月)に計画が始まり、合併特例債活用期限内(2020年3月)の竣工が求められた福岡県嘉麻市の新庁舎の計画である。この時代背景に対して実直に応答するため、安心・安全性確保とイニシャルコスト縮減を両立した合理的な建築のあり方を追求した結果、無駄なものが削ぎ落とされたコンクリートの「矩形」が残った。

 力強く美しい躯体を引き立たせる光環境を形成し、建築コンセプトを純化させることを意図した。

講評:

 クリア塗装の打放しRC直天井にぼんやりと映る外光や人工光は、利用者の外部との繋がり感や開放感を高めるとともに、室奥から見た窓面と室内表面との輝度対比を緩和し窓面のまぶしさを低減する。また、西日対策機能を持つ縦軸木ブラインドは夜間に適度な明るさにライトアップされ、昼夜の建物正面の外観を効果的に印象づけている。公共建築として簡素でありながら、建築と一体としてデザインされ、良質な光環境が実現されている。

(原直也)

入賞:ののあおやま

受賞者:
窪田 麻里(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
岩永 光樹(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
永田 恵美子(株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
青山共創株式会社
山下 文行(東京建物株式会社 住宅賃貸事業部賃貸住宅事業推進グループ)
弘中 陽介(三井不動産株式会社 開発企画部開発企画グループ)
中村 達也(三井不動産レジデンシャル株式会社 賃貸住宅事業部事業室)
建築設計:
田村 慎一(鹿島建設株式会社一級建築士事務所)
デザイン監修:
隈 研吾(隈研吾建築都市設計事務所)
ランドスケープデザイン監修:
平賀 達也(ランドスケープ・プラス)

作品コンセプト:

 青山の森に「安全な明るさと快適な暗さの共存」を目指す光環境が出現した。高層住宅やサービス付き高齢者住宅、保育園、店舗が入った低層建築を、約3,500 ㎡の緑やビオトープを小径で繋ぐ大規模緑地が囲み、豊かな自然が生きる青山の生活環境を形成している。建築とランドスケープのデザインと一体化し、光環境を同次元で設計することにより、「ののあおやま」の夜景は青山の文化と品格を表現しブランド化することに成功した。

講評:

 豊かな緑とビオトープのある青山の森に「安全な明るさと快適な暗さの共存」を図り、ボラードとポールスポットで安全のための足元明かりを確保し、視点のポイントとなる樹木とビオトープに光を絞ることで、森に快適な暗さを作り出している。「暗さのデザイン」であるとも言える。建築とランドスケープを光で繋ぎ、敷地全体に一体感を作り出しながらも、それぞれの光は細部まで練られており、上質で心地よい空間に仕上げられている。

(原田武敏)

入賞:大正大学8号館

撮影:株式会社エスエス東京

受賞者:
堤 裕二(株式会社大林組 設計本部 建築設計部)
佃 和憲(株式会社大林組 設計本部 建築設計部)
小山 岳登(株式会社大林組 設計本部 設備設計部)
作品関係者:
事業主:
学校法人 大正大学
照明設計:

猪股 寛(パナソニック株式会社 ライティング事業部)

作品コンセプト:

 図書館やラーニングコモンズを核とする学修拠点に、地域交流を促すブックカフェ等を加えることで、地域に根差し、ずっと居たくなる学びの場となることを目指した。自然光が降り注ぐ日中から、日没とともに間接照明による落ち着いた空間へと時の移ろいを感じることができる。仏教由来のある七宝繋ぎから着想を得た七宝パネルが行燈のように、建物内や地域を照らし、仏教精神を基調とする大学のアイデンティティを体現させた。

講評:

 七宝紋様のスチールパネルに包まれた外装はシャンパンゴールドで彩られ、昼は明るく煌びやかな印象を受ける。しかし夜、七宝紋様の背後に仕込まれた明かりが灯ると、外装の色は闇に消え、仄かに灯る行燈のような姿へと変わる。昼と夜の表情の違いが印象的である。館内もトップライトによる昼光やベース照明のある昼のシーンから間接照明が浮かび上がる夜のシーンへと移り変わる等、細やかな光の配慮が行われている点も評価された。

(原田武敏)

審査員特別賞:熊本城特別見学通路

撮影:益永研司写真事務所

受賞者:
塚川 譲(株式会社日本設計九州支社)
鬼木 貴章(株式会社日本設計九州支社)
岩永 朋子(株式会社遠藤照明)
作品関係者:
事業主:
熊本市

作品コンセプト:

 被災した城内に点在する歴史の遺構や震災での崩落箇所、既存樹木を避け、針の穴ほどの空間を繋ぎ合わせて行く作業を繰り返すことで創られた全長350m、高低差21mの一筆書きの柔らかな弧を描いた見学通路。熊本城の環境と一体となった佇まいを目指すため、そのダイナミックかつ繊細な流れを、途切れることのない連続した光で照らすことで、その形状や構造の美しさを表現し、建築同様に熊本城の夜景に寄り添う照明デザインを目指した。

講評:

 見学通路全長350mの照明デザインは、通路片面に配置されたライン照明で構成され、その光が檜のデッキ床面を柔らかく照らしている。反射光が対面の欄干部の白いフェンスに反映し、高低差21mの空中歩廊がまるで光により浮遊しているような印象を与えている。ライトアップされた熊本城と光の対比を上手く構成させており、これから先、長きに亘って復興工事を続ける熊本城跡へ優しく寄り沿った心に響く光環境が創出されている。

(松下美紀)

2020年 照明デザイン賞 講評

総評

応募総数は52作品で1〜2次審査を経て現地審査対象となったのは11作品。審査員(2名ずつ)が各地に赴き関係者の説明を受けながら審査を行った。今回は外部から審査員を迎えたことで照明デザインの間口や奥行をさらに広げることができたのではないだろうか。最終審査では活発な議論が交わされ厳密かつ十分な選考過程を経て、8作品が受賞の栄誉に浴することとなった。どの作品も明確なテーマと優れたデザイン性を有し、これからの照明に新たな視座を与えるものであった。

(審査員長 富田 泰行)

最優秀賞:武蔵野美術大学 ZERO SPACE

撮影:NACASA&PARTNERS INC.

受賞者:
山下 裕子(Y2 LIGHTING DESIGN Co., Ltd.)
作品関係者:
事業主:武蔵野美術大学
デザイン:五十嵐 久枝(イガラシデザインスタジオ)稲垣 竜也(イガラシデザインスタジオ)
施工:清水建設

作品コンセプト:

 「ZERO SPACE」は武蔵野美術大学内にあり、進路のWEB検索スペースから、多様な用途に対応できる「場」へのコンバージョンである。東西2面が35mのガラスで外光がたっぷり入るコンクリート建築の1階。 外の景色が素通しで、開放的だが通路の様に無意識だった空間を、「場」として意識する仕掛けとして、天井のあり方を検討し、白い“ゼロ”を浮かべた。アートやデザインを学ぶ学生達に向けて、アイディアが誕生する「始まりのゼロ」という想いの形でもある。“ゼロ”はスケルトンの黒天井を背景に、グレアレスな人工光と自然光の床反射を受け、自身が発光している様な視覚効果で空間の核になっている。また照明回路をゼロの内と外、配置をゼロに沿わせ、大きな「光のゼロ」のバリエーションで4シーンを構成し、自然光の変化に合わせてゆっくりチェンジさせ、時間を持つ空間にした。美大らしい新しい創造空間の「場」として運用されている。

講評:

 ブラック&ホワイトのコントラストがひと際目を引くフォトジェニックな空間である。それが現地に行くと単なる写真映りのよい作品でないことに気づかされた。一見では照明器具が見えないのにゼロ天井と石ころベンチが発光して見える。この場所はかつてMACが列を成して置かれていた学生達の情報拠点であったがいつしかその役目を終え、ZEROという始まりを予感させる学びの場の象徴空間へとコンバージョンされたのだ。光を帯びた天井形態は誰がどのように決めたかが現地審査で話題になった。かなりの紆余曲折があったようである。空調など設備との取り合いや限られた予算に加え、場所の意味性に基づく明快で大胆な表現の追求などさまざまな議論の末に生まれたカタチであった。低予算を嘆く割には器具取り付けや配光制御、運用に工夫が見られたのも高い評価につながった。このシンプルで大胆なコンバーションの光は最高得点を集め審議でも多くの評価を獲得し最優秀の栄誉に輝いた。

(富田 泰行)

優秀賞:谷口吉郎・吉生 記念金沢建築館

撮影:YAMAGIWA(撮影:大川 孔三)

受賞者:
谷口 吉生(株式会社 谷口建築設計研究所)
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
山野 之義(金沢市)
建築設計:

荒川 照陽(株式会社 谷口建築設計研究所)
木藤 美和子(株式会社 谷口建築設計研究所)
設備設計:
松本 尚樹(株式会社 森村設計)
照明設計:
石井 孝宜(岩井達弥光景デザイン)

作品コンセプト:

 金沢出身の著名建築家谷口吉郎氏ゆかりの地に建設された、建築・都市に関するこのミュージアムは、様々な活動を通じ、世界へ建築文化の発信拠点を目指している。
建築の歴史と現在そして未来をつなげる光を、吉郎氏設計の迎賓館別館游心亭をLEDで再現した常設展示室の光、最新の技術で様々な企画展に対応する企画展示室の光、そしてそれらを包み込む長男吉生氏の建築が纏う光の三つの光によって実現した。

講評:

 日本を代表する建築家谷口吉郎氏・谷口吉生氏親子の住居跡に建つ、建築・都市の様々な活動を金沢から世界へ発信する建物である。設計は谷口吉生氏。1階の企画展示室では、主照明に様々な展示に対応出来る多機能スポットライトを採用し、ベース照明と主照明用ライティングトラックを28mm幅のスリットに納めてスッキリした天井面を作り出すことに成功した。2階の常設展示室では、谷口吉郎氏の代表作の一つ、迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室で使われていた白熱灯や蛍光灯の照明をLEDで忠実に再現し、谷口吉郎氏の明るさや照明に対する考え方を、来場者が直接体感できる空間となった。今回新たに庭の水盤に映り込む植栽の照明と茶室待合の障子の竹の葉陰の演出を加えることで、金沢でしか味わえない景色を作り出した。ロビー内部からのもれ光を生かした建物外観照明は、この建築館を歴史的街並みの中に穏やかに溶け込ませる役割を果たしている。

(近田 玲子)

優秀賞:ショウナイホテル スイデンテラス

撮影:平井 広行

受賞者:
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
YAMAGATA DESIGN 株式会社
建築設計:
坂茂建築設計
構造・設備設計:
Arup
ランドスケープ:
オンサイト計画設計事務所

作品コンセプト:

 本施設は、新産業創出を目指すベンチャー企業等が研究活動を進めるサイエンスパークにおける、地元と来訪者を結ぶ宿泊、飲食、温浴、文化、育児の施設整備計画である。
庄内の美しい原風景である水田に優しく挿入された建築が、やわらかい光を纏い水田に浮かぶ光景を基本イメージに、間接照明の光で建築を表現し、四季折々の水田風景との調和をはかり、やすらぎの空間にふさわしい、人によりそう光環境創出をめざした。

講評:

 水鏡という手法がある。宇治の平等院鳳凰堂がその代表例である。建物が水面に反射して生じる実像と虚像が醸し出す浮遊感のある風景が私たちを不思議な感覚に誘う。

平等院鳳凰堂が意図したのは<西方極楽浄土>だったそうだが、スイデンテラスの場合も、<水田>に見立てられた大きな水面の中央の<アゼミチ>(に見立てられたメインアプローチ)を辿る中で、異空間への到達が準備される。優れた宿には川のせせらぎや潮騒の音あるいは山の眺望など宿泊者を日常生活から離脱させる<設え>が不可欠なのである。

水鏡―反射のデザイン原理は照明デザインでは間接照明という手法で表現される。間接照明による光の反射で照らし出された天井や壁面からのほのかな光は建築空間を浮かび上がらせる。宿泊フロントやレストラン、ライブラリーが配された共用棟では切妻屋根の構造体のシルエットを浮かび上がらせるし、浴室棟では野趣あふれる屋根構造がマニエリスムの館、パラッツォ・デル・テに紛れ込んだかのような錯覚をもたらす。間接照明はコンビニのフラットな照明に慣れた目にはほの暗く感じられるかもしれないが、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を持ち出すまでもなく、ほの暗さは日本文化の伝統に内蔵されていたものではないだろうか。

(渡辺 真理)

優秀賞:The Okura Tokyo

撮影:佐藤振一写真事務所

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
田中 謙太郎(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩永 光樹(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
梅原 真次(株式会社 ホテルオークラ東京)
建築・ID・ランドスケープ:
谷口 吉生(谷口建築設計研究所)
インテリアデザイン:
Terry McGinnity(GA design)
建築・ID・ランドスケープ:
田口 晃(大成建設一級建築士事務所)
インテリアデザイン:
若本 俊幸(株式会社 観光企画設計社)

作品コンセプト:

 2019年9月にThe Okura Tokyoとしてリニューアルオープンしたこのプロジェクトでは、「究極の和風」と「現代の快適性」の融合をコンセプトに照明計画がされた。特徴的なオークラロビーは忠実に再現されLED光源によって柔らかな光環境を見事に現代に蘇らせた。車寄せとなるオークラスクエアでは水盤に映り込むプロムナードスクリーンの間接照明と柳の木のライトアップが印象的な景色を浮かび上がらせている。

講評:

 建築的、社会的にも注目度の高い日本を代表する本ホテル改築計画には、建築やインテリアさらにランドスケープそれぞれに高品質なデザインが求められた。おのずとそれらの照明デザインにも求められた高いデザイン性と完成度の期待に応え、目標とする空間の光環境を完成させたことは高い称賛に値するものである。

 伝統の継承と現代技術への移行という理念のもと、「究極の和風」実現のための課題として、豊富な光の階調、柔らかな輪郭の陰影、自然光の移ろいに呼応、やすらぎの演出、自然光に倣った光をかかげ、それらを見事に成し遂げると同時に、「現代の快適性」を適切なLED化と制御ダイアグラムによって実現させた。また、ホテル特有の多様な業種や空間種別に対し、緻密で繊細な対応を行い、最終目標であるお客様本位の高品質なホスピタリティーの光環境が作り上げられたことは、照明デザインに携るプロフェッショナルの手本とすべき業績である。

(岩井 達弥)

入賞:ミライon(長崎県立長崎図書館及び大村市立図書館、大村市歴史資料館)

撮影:中村 絵

受賞者:
牛込 具之(株式会社 佐藤総合計画)
石原 広司(株式会社 佐藤総合計画)
武石 正宣(ICE都市環境照明研究所)
作品関係者:
事業主:
長崎県、大村市
電気設計:
関根 秀幸(株式会社 佐藤総合計画)
建築設計:
佐々木 信明(株式会社 INTERMEDIA)

作品コンセプト:

 長崎県大村湾を臨む敷地に建設された図書館である。 緩やかな湾型平面と段々状に重なる書架閲覧エリアを、一つの大屋根で包込む建築計画を意識しスーパーアンビエント&ヒューマンタスクの光環境を計画した。スーパーアンビエントは大きな間接照明で柔らかな表情の大屋根天井を見せることを考え、ヒューマンタスクは書架と一体化させミニマムかつパーソナルな光とした。

小さな光で長崎の夜景のような光景を創出し、同時に図書館で国内初のZEB-Readyを実現した。

講評:

 一枚の大屋根に包まれた開放的な空間でありながら、「本を読む」のみならず、本との「出会いの居場所」を、大小の空間構成と照明手法によって創出している。日変化で移り変わる自然光を、南面するエクステリアの芝に覆われた地面に反射させたガラスウォールから採り込み、大屋根の間接照明が心地よい、新しいタイプの図書館建築といえよう。閲覧室では、書棚用のカワイイ特注器具の輝度が、文字と触れる楽しみを演出している。

(木下 史青)

入賞:環長崎港夜間景観整備 平和公園地区

撮影:株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
中村 美寿々(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
木村 光(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
長崎市

作品コンセプト:

 国際平和都市・長崎を象徴するこの場所では、「祈りの感情をいざなう」静謐な景色をつくることを目標とした。 整備後の広場では、緑を背景に照らし出された祈念像に向かって、足元に埋め込まれた光の粒が輝く、鎮魂と祈念の感情を導くような祈りの景色が生まれた。

 公園内の平和の泉、原爆落下中心地、近隣の子供たちが通う山里小学校、平和祈念館の重厚感ある建物といった周辺施設も、地区全体で合わせて整備が行われ、静けさや祈りを思わせる佇まいとなっている。

講評:

 平和を祈念する場所である長崎の平和公園及びその周辺施設を一体的に整備する夜間景観整備のプロジェクト。全体的に照度を抑えた落ち着いた空間となっているが、平和公園では、祈りの先へと人々を導く路面の光ファイバー照明、細やかな光で制御された平和記念像、その背景となる樹木、と祈りをいざなう強弱のある光が丁寧に重ねられている。この場所が静かな祈りの空間であることを自然と光で感じることができる点が評価された。

(原田 武敏)

入賞:富山銀行本店

撮影:日建設計

受賞者:
江里口 宗麟(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
上野 大輔(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
佐々木 泰和(株式会社 YAMAGIWA 東日本PDC)
作品関係者:
事業主:
中沖 雄(株式会社 富山銀行 取締役頭取)
建築設計:

塩田 哲也(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
河辺 伸浩(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
大西 由希子(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
コンサルティング:

野村 芳和(株式会社 YAMAGIWA 中部支店)
清水 良一(株式会社 YAMAGIWA 金沢営業所)

作品コンセプト:

 『駅前空間に賑わいをもたらし、街の顔となるライトアップ』をコンセプトとした富山銀行新本店のファサード照明である。

 富山の自然や四季、高岡の伝統行事や文化からインスピレーションを受けた演出がプリセットされ、その内容とともに見上げる位置や角度によっても、その表情を豊かに変化させる。

 また、県と市と共に官民一体となって行った、約1年にも渡るデザインプロセスを通して、街の象徴となるライトアップを目指した。

講評:

 高岡駅前の賑わい創出に本ライトアップ計画が担った役割は大きく、かつ景観というデリケートな課題をクリアするため、施主、設計者、メーカーだけでなく行政も参加しOne Teamで取り組んだ好例といえる。このようなメディアファサードは、大型ビジョンや電飾サインとの区分けがよく論議されるが、本件は建築的特徴とよく調和し、環境装置としての位置付けをスケジュールやコンテンツの吟味によって貫いていることが大きく評価できる。

(岩井 達弥)

審査員特別賞:京都経済センター

撮影:株式会社エスエス大阪 左海 一郎

受賞者:
入江 俊介(大成建設 株式会社)
西崎 暢仁(大成建設 株式会社)
坂下 泰士(大成建設 株式会社)
作品関係者:
事業主:
野瀬 兼治郎(京都経済センタービル管理組合)
建築設計 :

内藤 多加志(大成建設 株式会社)
高岩 遊(大成建設 株式会社)
設備設計 :
根本 昌徳(大成建設 株式会社)

作品コンセプト:

京都の中心地である四条室町にふさわしい京都創生のシンボルを創出した。夏の訪れを告げる祇園祭の山鉾が建ち並び風情ある街へと変容するこの地に、柔らかでありながらも存在感を魅きたたせる「行灯」のような建築を目指した。京町屋の店先から漏れる灯りの温かさを創出する為、建築と設備を融合し具現化した。また色温度を山鉾の提灯と合わせることで、あたかも昔から建っていたような建築を目指した。

講評:

京都中心部の街角に建つこの施設の照明は、日常に限らず祇園祭に相応しい街並みを創出する。二つの通りに面した回遊バルコニー上部の軒を想起させる水平に配した木肌をほんのりと街中に浮かび上がらせ、祭期間中は四条通面の照明が行灯のように街を照らす。かつての連なる軒先が形成した整然とした水平基軸の街並みを、混沌とした現代にささやかではあれ確かに蘇らせており、京都の町や照明デザインの行方を照らすかのようである。

(原 直也)

2019年 照明デザイン賞 講評

総評

 応募総数は31作品。7名の審査員により一次、二次審査を経て11作品に絞り込み、応募者立会いの現地審査を経て最終審査委員会を行い、最優秀賞1作品、優秀賞3作品、入賞3作品、審査員特別賞1作品と、照明デザイン賞としてのレベルの高さを示す計8作品を決定した。受賞者は建築関係者、大学関係者、照明関係者と多岐にわたる。照明デザイン賞審査委員会では、より多くの人が気軽に応募できるよう、2020年に向けて要項の簡略化を検討中である。

(審査員長 近田 玲子)

最優秀賞:水木しげるロード

撮影:鈴木 文人

受賞者:
長町 志穂 (株式会社 LEM空間工房)
熊取谷 悠里 (株式会社 LEM空間工房)
作品関係者:
事業主:
中村 勝治(境港市長)
灘 英樹(境港市 建設部 次長 兼 水木しげるロードリニューアル推進課 課長)

設計関係者

土木設計:
栗原 裕(有限会社 ユー・プラネット)
システム設計:
伊藤 貴史(ウシオライティング 株式会社)
VR監修:
福田 知弘(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

作品コンセプト:

 水木しげるロードは、公共道路空間の新たな魅力化と昼夜にわたる集客を期待するまちづくりとして、歩道拡幅整備と照明デザインによって実現したものである。
当該道路は1993年供用開始され、芸術的な妖怪ブロンズ彫刻のある町として人気を博してきたが、近年観光客も減り店舗は16時には閉店するような状況であった。そこで道路環境の改善とともに「日没後まで居たくなるまち」をめざし、照明効果によって「妖怪の気配を感じられる光のナイトミュージアム」としてリニューアルすることを照明デザインとして提案し採択された。約800mの歩道は、177体のブロンズ彫刻が再配置され「妖怪影絵」「音と光の演出」をはじめとする異なる照明手法と効果を公共照明としてとりいれた「光をめぐるまち」である。すべての照明は、全域でトータルに細かくプログラム制御し、この道に相応しいエンターテイメント性と深夜の省エネルギー、安全安心を同時に実現している。

講評:

 照明デザインの新たな可能性を切り開いたプロジェクトとして、際立った評価で最優秀賞に選ばれた。
JR境港駅から約800mにわたり、地元出身の漫画家水木しげる氏の創出した177体の妖怪ブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」が、25年目のリニューアルで、光の妖怪が出現する街路へと生まれ変わった。ブロンズ像への照明に加え、雰囲気を変えるカラーライティング、ゴボプロジェクターで路面に投影される妖怪たちの姿、そしてその気配を感じさせる街路灯や店先照明の変化や動きなどの緻密な照明制御が、効果的な音響と相まって、あたかも妖怪が住んでいるかのような街路を創り出した。
通常このような計画は、短期イベントでも道路照明や景観照明の規制や基準、あるいは様々な意見に阻まれることが多い。しかし、これら多くの課題を照明デザイナーと熱意ある行政担当者や住民が一致協力して解決し、常設の施設として成立させた本件は、照明デザインの歴史に足跡を残す意義のあるプロジェクトといえるだろう。

(岩井 達弥)

優秀賞:三越日本橋本店本館

撮影:鈴木 文人

受賞者:
山本 幹根 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩田 昌大 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
株式会社 三越伊勢丹
建築設計:
隈研吾建築都市設計事務所
施工:
株式会社 三越伊勢丹プロパティ・デザイン

作品コンセプト:

 国の重要文化財に指定された日本橋三越本店、本館1階の改修計画である。
歴史的な建物を保存しながら、「白く輝く森」という建築デザインのコンセプトのもと照明計画を行った。
アール・デコ様式を用いた現代的な樹冠はフロア全体に展開され、美しいグラデーションの光で空間に明るさ感を与え、おもてなしの場を演出している。各入口には、お出迎えの為の特別な天井が設けられ、光に包まれる象徴的な場となっている。

講評:

 重要文化財に指定された百貨店の改装計画である。コンセプトは極めて明快。柱上部にアルミの葉状樹冠を取り付け、一枚一枚の葉に間接照明を仕込んで「白く輝く森」を創出する―ということだ。実現にあたってデザイナーは、設計シミュレーションや原寸モックアップで検証を重ね、光源選定、反射面角度、照明位置、器具交換の可否の検証など、ミリ単位でディテールの作り込みを行った。結果として、全く独創的で未来的な光空間を現出させ、大正初期、竣工当時の市民に感じさせたであろう百貨店本来の「晴れがましさ」までも現代に再現することに成功した。光のガイドラインによるテナント空間の光制御や、防災設備等とのデザイン上の折り合いのつけ方も含め、照明デザイナーのプロフェッショナルな関与は大いに評価されるべきで、「白く輝く森」に江戸以来の伝統と未来を二つながらに感じさせ、ある種の気品をもたらせたのも、こうした繊細な職人芸の賜物だろう。

(植野 糾)

優秀賞:慶應義塾大学病院1号館(新病院棟)

撮影:日暮 雄一

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
斎藤 俊一郎 (株式会社 竹中工務店)
作品関係者:
事業主:
慶應義塾
建築設計:
江波戸 宏(株式会社 竹中工務店)
近藤 朋也(株式会社 竹中工務店)

作品コンセプト:

 東京・信濃町にある慶應義塾大学病院の新病院棟。「Keio Forest」をテーマに、随所に杜のモチーフをちりばめた柔らかな光環境をデザインしている。主動線であるホスピタルモールでは、遠くまで伸びる枝のように天井間接照明を計画。そこに接続する待合・ラウンジ空間においては、天井に複数の葉形のダウンライトを軽やかに舞わせ、滞在する人々の心を優しく包む。2階エントランスの光のパーゴラや、木立の重なりが、杜の中を散歩しているような心癒される光環境を実現している。

講評:

 大学病院に建設された新病院棟の照明デザインで、建築設計と照明デザインが一体となって非常に居心地の良い空間が作り出されている。木立・枝・葉・杜のコンセプトは、わかりやすく幅広い訴求力を持つ一方で具象的過ぎる印象を与えかねないが、実際に出来上がった空間では、それらのデザインが前面に出すぎて目立ちすぎるようなことはなく、照明デザインは空間の質・居心地の良さ・ひそやかな視覚的楽しさをもたらすことにひたすら寄与している。病院建築の照明ということもあり、比較的大人しいデザインではあるが、一見控えめながらも細部までこだわりを持って練られている。葉形ダウンライトも単純な仕組みでありながら、視覚的効果は綿密に計算されている。全体としてバランス感覚が素晴らしく照明デザイン賞に相応しい作品となっている。病院建築における今後の照明デザインの一つの方向性を示すものとしても価値ある作品であると評価されよう。

(吉澤 望)

優秀賞:京都 神楽岡 蓮月荘

撮影:堀内 広治

受賞者:
竹内 跡 (株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
熱田 友加里 (コイズミ照明 株式会社 LCR)
中村 公洋 (株式会社 日建設計 ソリューショングループ)
作品関係者:
事業主:
中山 哲也(トラスコ中山 株式会社 代表取締役社長)
設備設計:
小林 護(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
照明設計:
松本 慎二郎(コイズミ照明 株式会社 特機商品部 製作室)

作品コンセプト:

 京都市左京区のゲストハウス兼保養施設。外観は存在感を保ちながら住宅街の静けさに溶け込み、内部は大文字山を望む東側の開口部が自然を最大限に取り込む。素材は左官や焼杉板を使用し、日本建築らしさや職人の手仕事を伝える。照明は光によって「空間を広げる」をコンセプトに計画。光の「面」をつくることで、空間に奥行き感や多面性を持たせた。和紙をアクリルに封入する技術で導光板照明と行燈を開発し、伝統と最新技術の融合を実現した。

講評:

 この建物は、京都・哲学の道にほど近い静かな住宅地に建てられた客室5室の宿泊保養施設である。目を引くのは、凹凸のある石壁、焼杉板や左官仕上げの壁など、建物各所を形作っている素材へのこだわりと、それらを生かした光である。建物全体を通しての照明デザインの基本は「光の面を作る」こと、光によって空間に奥行き感や多面性を持たせることであった。大文字山を望むダイニング・ラウンジや客室、2つの大浴場では間接照明で天井を浮かせ、4つの庭では素材と光の絶妙なバランス、京都らしい伝統と格式を見ることが出来た。眩しさがなく辺りを柔らかく照らす光が訪れる人を迎える。随所に見られる光を取り込んだアートワークの中でも、手作業で透明アクリルの中に白い和紙が蓮の葉のように浮かぶ形を作り上げた行燈が印象的であった。建築設計者が望む空間が、光によって余すところなく表現されている。

(近田 玲子)

入賞:東京大学総合図書館

受賞者:
川添 善行 (東京大学 生産技術研究所)
中澤 公彦 (清水建設 株式会社 設計本部 設備設計部4部)
赤羽 元英 (パナソニック 株式会社 エコソリューションズ社)
作品関係者:
事業主:
国立大学法人 東京大学
設計・監修:
東京大学キャンパス計画室(野城 智也)・同施設部
建築設計:
稲場 万鎖夫(清水建設株式会社 設計本部 教育・文化施設設計部)

作品コンセプト:

 関東大震災の記憶を継承する噴水を、地下空間であるライブラリープラザへ光を導入するトップライトに生まれ変わらせた。周辺の外構計画では関東大震災で焼失した旧図書館のレンガ基礎に照明を組み合わせ、キャンパスの憩いの場所としている。地下空間のライブラリープラザは、噴水トップライトからの自然光により、地下でありながら四季を感じられる空間が完成した。噴水トップライトからの自然光を補うかたちで、木格子の天井全体が照明となって、器具・グレアを感じさせない人にやさしいデザインとした。

講評:

 このプロジェクトでは光のデザインが建築設計の核心的役割を果たしていることが評価された。関東大震災で焼失した旧図書館の噴水をトップライトとして蘇らせる。広場に人を集める為に、周囲の建築からの漏れ光や遺構ベンチの間接照明だけで外構をまとめる。地下のライブラリープラザも、天井一面を覆う木格子ルーバからの光で、大きな照明器具の中に身を委ねるような気配を漂わせる。
設計者の強いデザイン意図が結実している。

(面出 薫)

入賞:香月メディカルビル

撮影:黒住 直臣

受賞者:
林 総一郎 (株式会社 三菱地所設計)
作品関係者:
事業主:
香月 孝史(医療法人社団秋月会香月産婦人科)
建築設計:
杉本 宏之(株式会社 三菱地所設計)
荒井 拓州(株式会社 三菱地所設計)
電気設計:
伊藤 匡貴(株式会社 三菱地所設計)

作品コンセプト:

 広島市内の築17年のオフィスビルをコンバージョンし、出産・子育てを行う女性とその家族を総合的にサポートする都市型複合医療施設に再生した。祝祭の場に相応しい華やかで輝くようなReデザインを施し上質で洗練された空間へと昇華させている。三層に分節された各々の外装にライティング演出を行って建物に奥行き感を生み出し、母親が我が子を包み込むように全体を優しい光のベールで包み込んだ。地元広島カープが勝利した夜には赤く輝き地域文化を体現する。

講評:

 築17年の事務所ビルを産婦人科、乳幼児医療保育施設に用途変更した建物。外観意匠で魅せる候補物件が複数あった中で、ガラス、金属仕様外観への照明企画が地域景観に貢献した点に加え、医療施設としての安心感、清潔感のあるアイボリー調内装に相応しい間接光の取り入れ工夫、視線方向に配慮した防眩器具による視覚に優しい照明計画、屋上庭園の開放感に満ちたヒーリング効果のある利用者優位の照明デザインが総合的に評価された。

(水馬 弘策)

入賞:熊本県医師会館

撮影:平井 広行

受賞者:
今村 雅樹 (日本大学/今村雅樹アーキテクツ)
石黒 竜夫 (伊藤喜三郎建築研究所)
井谷 博行 (山田照明 株式会社)
作品関係者:
事業主:
公益社団法人 熊本県医師会
建築設計:
伊藤喜三郎建築研究所・今村雅樹アーキテクツ設計JV
構造設計:
TIS & Partners
照明設計:
設楽 義行(山田照明 株式会社)
中村 大輔(山田照明 株式会社)

作品コンセプト:

 この建築は医師会の新しい理念「開かれた医師会」として、新社会の拠点となるべく設計された。
熊本城に面するお堀遊歩道側と反対の電車通りに面する両通りを、1階「パサージュ」で結びシンボル的空間とし、2階「300人ホール」へと繋がるパブリック空間を計画している。熊本大震災復興を願って現場制作した天井画「雲雀」や旧会館の「めがね椅子(坂倉準三デザイン)」43脚を再生し、多くの人に利用されるよう「光環境によるうつろい」をエレメントとして設計された。

講評:

 北側に復興中の熊本城、南側を電車通りに挟まれた最高のロケーションに建っている。光によるウェイファインデングの効果でスキップフロアの構成が分かりやすい。ロビーはガラス張りで透明感に溢れ、ホールの光幕照明も美しい。建築外観は穴の空いたパンチングパネルで構成され、夜間に暗くなるオフィスビルエリアに建物から漏れる光で優しく通りが照らされている。歴史都市熊本に新しい夜間景観を寄与したことが高く評価された。

(松下 美紀)

審査員特別賞:山のセカンドハウス

撮影:井上 玄

受賞者:
久保 隆文 (株式会社Mantle)
井上 玄 (株式会社 GEN INOUE)
宇谷 淳 (株式会社 GEN INOUE)
作品関係者:
施工 :
春田 勝盛(テクノアート)

作品コンセプト:

 山の中に立てられたセカンドハウス。7つの短冊状に分けられた空間ではベッドやソファなどの固定的な家具は置かず、素材やプロポーションに変化をもたせ空間の質に差異を演出している。
使う人がアクティビティや気分によって移動し、居場所を選ぶように、空間との関わり合いを誘発する事を目的としている。大きな窓が特徴的な空間において、屋外が真っ暗になることを効果的に利用し、窓に映りこむ光をデザインした。
多様に映りこむ光環境を楽しめるような自由な空間となっている。

講評:

 セカンドハウスと言うより家族のための自己啓発道場のような環境だった。人家の少ない村の斜面地を利用して7つに分節されたウエハースのような建築空間だ。家族がそれぞれに勝手な時間を楽しむために作られたそうだ。
光の設計もその意図を反映して7種類の異なる性質を持たせている。明るい部屋と暗い部屋。上からの光や下からの光。陰翳の濃い空間と均一に照らされた空間。まるで光の実験道場のようにも思えて楽しそうだった。

(面出 薫)

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